和紙の話でもう一つ ~豪雪地帯で作られる五箇山和紙~
北陸物語案内人の若井です。
前回、和紙の「寒漉き」の話をしました。
気温が低い方が良い和紙ができるということでしたが、そのつながりでもう一つ。
富山県の五箇山では冬、かつては合掌造りの家の中で盛んに紙が漉かれていました。現在も五箇山和紙はこの地方の特産品になっています。
農閑期であり、養蚕も休みで、深い雪に閉ざされる中、「何かできることはないか?」ということで、「紙でも作ろうか」となったのかと、勝手に思っておりましたが、冬に紙を漉くことは、実はちゃんと理に適っていたんですね。
また、今ではほとんど見られなくなりましたが、雪国の和紙の産地では、積もった雪の上に原料の楮(こうぞ)を広げて天日で干す「雪さらし」も行われます。雪さらしには漂白の効果があるそうで、雪国ならではの暮らしの知恵から生まれた技法なんです。
五箇山の東中江和紙加工生産組合では今でも「雪さらし」を行っており、真冬の風物詩として親しまれています。
先人たちのさまざまな行いには、自然に寄り添う知恵が隠れています。
北陸の暮らしにはそんな知恵がたくさん隠されいて、その一つひとつを発見するたびに、ちょっと感動します。
寒い冬に旬を迎える、温かみのある手ざわりが魅力の和紙。
旅の思い出に、いかがでしょうか。
2024.12.20