今年はひと際華やかに咲いて欲しい! 美しい桜に秘められた秘話 〜佐藤桜編〜

北陸物語案内人の若井です。

兼六園の真弓坂口の近くに、「佐藤桜」と看板が掲げられた桜があります。根元近くには「太平洋と日本海を桜でつなごう 佐藤 良二」と書かれた標柱もあります。

かつて、名古屋と金沢を結んだ旧国鉄バス・名金線の車掌をしていた佐藤良二さんが、移植に成功した荘川桜の花を見て涙する地元の人の姿に、桜の花がこれほどまでに人の心を動かすことを知り、自分が勤務する名金線の沿線、つまり名古屋から金沢までを桜の花でつなごうと思い立ちます。自費で苗木を購入して、沿線に約2000本を植えましたが、病に倒れて、志半ばにして47歳で生涯を終えました。その1500本目がこの佐藤桜とも言われますが、今となっては定かではないようです。

太平洋から日本海まで、桜で心を一つにしようとした佐藤さんの偉業は、教科書に載ったり、映画にもなったりしていますので、ご存知の方も多いかもしれません。

佐藤氏は、ソメイヨシノの苗木のほか、荘川桜(エドヒガン)の種から育てたものも植えています。この苗木は数が少なく、荘川一郎、二郎と名前をつけ、我が子のように大切に育てていたとか。その七番目、つまり荘川七郎は、縁があって佐藤氏から輪島市の学校の先生に贈られました。現在は石川県輪島漆芸美術館の駐車場に植えられ、毎年、多くの人を楽しませています。

さらに、七郎の子、つまり荘川桜の孫となる「荘川孫七郎」が、七尾市和倉温泉の湯っ足りパーク付近に植えられています。佐藤さんの思いは、金沢からさらに、七尾、輪島へと続いているんですね。

ちなみに、日本最長距離だった名金線のバス路線は、その後、年を追うごとに短縮されて、今は金沢市内だけの路線となりました。しかし、路線名には今も「名金線」の名が受け継がれています。金沢の中心部を走る路線ですが、名金線の「名」が名古屋だと知る人は少ないでしょうね。

(花が咲いている佐藤桜の写真はかなり前に撮影したもの。まだ「いもり堀」がないですね)

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