北陸物語facebook ~持続可能な知恵が詰まった、次世代に継ぎたい北陸のモノ・コト(その5)~

北陸物語案内人の若井です。

SDGsでも注目の「持続可能」をキーワードに、北陸の魅力を見つめ直す旅案内、その第5弾です。

今回紹介するのは、「富山湾の定置網漁」です。

さて、「定置網漁」ってご存知でしょうか? 簡単に言うと、沿岸に網を仕掛け、そこに入って来る魚を捕らえるというもの。いわゆる「待ちの漁法」のひとつで、富山湾では400年以上前から続く伝統漁法です。全国各地で定置網漁は行われていますが、歴史の古さや規模、知名度とも富山湾の定置網漁は日本屈指と言えます。

空から見た定置網

この富山湾の定置網漁を有名にしたのが、富山県氷見市から石川県七尾市の富山湾沿いで、冬に盛んとなるブリ漁。そしてもう一つが、春先にシーズンを迎えるホタルイカ漁です。

ところで、沿岸に網を仕掛けてやってきた魚を捕らえると聞くと、「一網打尽」にして捕り尽くしてしまうのでは?と心配されるかましれませんが、実は魚が網に入っても半分以上が逃げてしまい、例えばブリの場合、網に入って捕まえられる魚は3割程度と言われています。つまり資源を根絶やしにしない優しい漁法であり、しかも魚にあまり傷つけずに捕れることから、魚に優しいのです。

さらに、優しいのは自然や魚だけでなく、環境や人にも。

漁場は沿岸なので船による移動も短時間で済むため燃料もわずかで済みます。また、決まった時間に漁を行うことができるため、漁師さんの出勤時間や休業日も決まっていて、網元によっては月給制というところもあって、出勤時間が早朝ということを除けばサラリーマンと変わりません。ブリやマグロ、アジ、サバ、タイ、イワシ、スルメイカなど、捕まえる魚を変えながら、通年で漁を行いますので、定住して漁を続けられるのもいいですね。

定置網漁の様子。身網と呼ばれる部分に入った魚を取り上げる

そして、漁場が沿岸ということで、水揚げされてすぐのきときと(富山弁で新鮮と言う意味)の魚を食べられるということは、旅行でいらした方にとっては一番のメリットではないでしょうか。ブリは沖合ですぐに水氷でしめ(沖じめ)や神経じめを行い、鮮度を保ったまま市場に運ばれます。

このように先人たちの知恵が詰まった優れた漁法は海外からも注目されていて、氷見市ではJICAと連携し、海外からの研修生などを積極的に受け入れてきました。

定置網漁は世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」の里海を語る上で欠かせない存在ですし、「氷見の持続可能な定置網漁業」は日本農業遺産に認定されています。

定置網漁は自然にも環境にも人にも優しい漁法として次世代へ引き継いでいきたいもの。

お魚を食べる際、どこでどのように捕られた魚かということにもぜひ関心を持ってくださいね。

SDGsってよくわからない、何から手をつけたらいいの?という方も多いかもしれませんが、定置網漁で捕られたを食べることでもSDGsに貢献できます。(画像提供:氷見市観光協会)

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