北陸物語facebook ~持続可能な知恵が詰まった、次世代に継ぎたい北陸のモノ・コト(その3)~

北陸物語案内人の若井です。

 SDGsでも注目したい、「持続可能」をキーワードに、北陸の魅力を見つめ直す企画、その第3弾です。

 今回紹介するのは、茅葺き屋根のある暮らしです。北陸で茅葺き屋根といえば、やっぱり五箇山の合掌造りですよね。

 さて、茅葺き屋根を見ると、思わず「懐かしい!」って声をあげてしまい人も多いのでは? 現代ではほとんどの人がそもそも茅葺き屋根の家に住んだ経験がないにもかかわらず、ついそんな声を発してしまいます。不思議ですよね。遥か遠い記憶を呼び覚ますような、これが茅葺民家の魔力というか、魅力なのかもしれませんね。

 そんな民家が連なる五箇山の合掌造り集落はなおさらで、「日本の原風景」と呼ばれるのも納得できます。いつまでも残って欲しい風景。誰もがそう思うのではないでしょうか。

 でも、この合掌造り。ノスタルジーだけで残していこうというものではありません。ここにある暮らしには先人たちのさまざまな叡智(えいち)が込められていて、「持続可能」を考える上で、現代を生きる私たちにたくさんのヒントをくれるモノ・コトだから。

 そのわかりやすい事例が、特徴的な茅葺の屋根です。合掌造りの民家は1階の居住部分は大工が作り、その上にのる巨大な三角形の屋根(小屋組部)は、とても簡単な構造で、住民たちが作って維持できるようになっています。急傾斜の屋根は北陸地方独特の湿気を含んだ重い雪が滑って落ちやすく、また、広い屋根裏は養蚕のための作業スペースとして利用されていました。

 五箇山や隣の白川郷には「結(ゆい)」と呼ばれる住民相互扶助の組織があり、20年おきくらいに行われる屋根の葺き替え作業は、その結によって維持されてきました(現在は業者が主に行っています)。

 葺き替えで出た古い茅は、昔も今も田畑の堆肥として利用され、まさしく循環型の暮らしが根付いています。写真は古い茅を敷いた畑で作られる伝統野菜「五箇山ぼべら」(かぼちゃ)です。

 他にも合掌造りの屋根に隠された叡智はたくさんあります。「懐かしい!」と思わせる背景にある、日本人が長年培ってきた自然と共生する生活文化にも注目していただけると、きっと今までとは違った五箇山の魅力に触れることができると思います。

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