定番から穴場まで。儚いうつくしさを楽しむ「桜のトンネル3選」富山県・石川県・福井県
地元ライターが北陸を代表する「桜のトンネル3選」を紹介します。
今年の北陸のお花見シーズンは過ぎてしまいましたが、来年の参考にしてください。
■松川の桜並木(富山市)
富山が誇る桜のトンネルといえば、やっぱり松川べり。
市の真ん中を流れる松川に沿って約2.5キロもつづく500本の桜並木は「日本さくら名所100選」に選ばれています。
元々は多くの松が植えられたことで名付けられた松川ですが、戦後、まちの復興を祈ってソメイヨシノが植えられ、いまの景観に。遊歩道が整備されており、桜のトンネルの下、人々が歩きながら花見を楽しむ様子はまちの風物詩です。

「松川七橋めぐり」でも知られるように松川には7つの橋が架かっており、これら橋の上から眺める桜並木も見事。夜のライトアップでは、漆黒の川面に桜が艶やかに映り、時がゆったりと流れるのを感じます。
中でも私がおすすめしたいのが遊覧船から見る桜のトンネル。七橋を30分かけてクルーズし、地上とは一味違った光景が楽しめます。船上では船長自らがまちの歴史や松川の見所を叙情たっぷりにガイド。クルーズのクライマックスは塩倉橋あたりで、大迫力の桜のトンネルが頭上に広がります。この塩倉橋周辺は、橋上から桜と川面のコラボを眺めるのにも絶好のスポット。いろんなシチュエーションで今だけの美しさを堪能してみたいものです。


■能登鹿島駅の桜のトンネル(穴水町)
桜色した木造駅舎に、アーチ型の窓。屋根の上でくるくるまわる風見鶏が、ノスタルジックでかわいい佇まい。能登半島随一の桜の名所として知られる、のと鉄道の「能登鹿島駅」です。同鉄道は七尾駅を出発点とする8駅33kmの短い鉄道で、終点の穴水駅の一つ手前にあるのがこの鹿島駅。春になるとうつくしい桜を見せてくれることから、「能登さくら駅」の愛称で親しまれています。

春になると、100本のソメイヨシノが線路を挟み、構内をすっぽりと覆いつくすように花開きます。緩やかにカーブしたホームは桜のトンネルに変身。列車が通るたびに花びらがひらひらと舞い、木々の向こうには透きとおる能登の海が浮かび上がります。この時期は夜のライトアップも魅力。行灯があたりをやさしく照らし、はじまりの季節、人の気持ちを励ましてくれるようです。

思いきって山手にある展望台に登ってみると、桜のピンクと海の青、そしてのどかなローカル線が織りなすカラフルなアートが待っていました。日々の煩わしさを一瞬忘れて、小旅行にきたような気持ちに。自然のうつくしさ、おおらかさにふれ、気持ちを新しくしたい人にぜひおすすめの場所です。

■足羽川の桜並木(福井市)
最後に紹介するのは福井の桜の名所、足羽川。
市の真ん中を流れる足羽川の堤防沿いに、約600本もの大木が全長2.2kmに渡ってつづくのが「足羽川桜並木」です。同じく桜で有名な足羽山と合わせて「日本さくら名所100選」にも選ばれており、そのスケールは日本一との呼び声も。

ここの花見といえば、堤防沿いをゆっくり散策するのがセオリー。けれども私がおすすめしたいのは、堤防から少し住宅街に入ったところにある「九十九橋北」から「花月橋」にかけての桜並木。花月橋はソメイヨシノの大木が多く、満開の頃には壮大な桜のトンネルが出現し、最高の撮影ポイントに。川面に姿を映す幻想的な桜のうつくしさは、言葉が見つからないほどです。

桜のトンネルをくぐるのももちろんいいのですが、遊歩道から少し離れて足羽川の桜並木を眺めてみると、そのスケールをよりくっきりと実感できます。贅沢な眺めにしばし立ち尽くす私。以上、知る人ぞ知る、北陸の桜のトンネルを集めてみました。いつもの花見では物足りない方、ぜひ訪ねてみてください。

松岡佐和子
石川県金沢市在住
富山県出身。大学時代を大阪で過ごし、Uターンして広告のコピーライターに。ことばで北陸3県の魅力を伝える仕事をしています。国内外問わず、旅が好き。小学生の息子と各地をめぐることを目標に日々コピーを書いています