北陸はカニ王国 カニの種類・食べ方も豊富です
■紅ズワイガニ(富山県新湊市) 昼セリ見学&新湊かに小屋で味わう高志の紅ガニ
聞こえる聞こえる!
ドスの聞いた低音でまさに競りをしている声が。ずんずん進んむと、光り輝く朱色の絨毯のようにカニが整列してます!
というのも束の間。あらら、あっという間に競り落とされたカニ達は次の茹で場へと移動。
そうです、今回は富山新湊漁港で何と!昼セリが見学でき、そしてカニが味わえるという面白いプランにやって来ました。


昼セリとは、午前0時に新湊を出港し、水深1000m の沿岸部より急に深くなった富山湾の漁場での漁獲。港に近いため漁にかかる時間は短く、鮮度抜群のうちに競りがかけられ、少しでも早く美味しく味わってもらうために昼でも行われるようになったそうです。誠に有難い競りです。
さあ、そろそろです!
釜から湯気がもくもくと上がり、大きな釜の中から茹で蛸のように、紅ズワイガニが茹でられてます。いよいよ真っ赤になり、甲羅もパンパンになって、次から次へとあげられていきます。そのあがった先を見てみると、山積み?いやいや、まるでTowerです。そうカニタワーみたい。これは来た甲斐があったぞと、心が躍りました。
茹で時間は15〜20分だそうです。

さて本番。
かに小屋には、箸とお盆におしぼり、そしてハサミが用意され、茹でたて熱々のあの紅ズワイガニが運ばれてきました。さばき方を聞き、ハサミと手で熱さを十分に感じながら、殻から身を外し、いざ口へ。
「う〜ん、うまい。」予想以上です。
続いて温かいみそとエキスが入った甲羅の中に身を浸して口へ。
「あーやっぱり最高!」。
舌と鼻と手と目、体中で蟹を堪能。あっという間に身がなくなった殻は透き通ってる。だから簡単にハサミ1本で食べられるのか。
それが紅ズワイガニの特徴なんですね。熱くてジューシーかつ濃い味。もっと早く知ればよかった。
紅ガニの「高志」という愛称は、紅い、新湊に縁のある地名、そして漁師の志が高い、という意味である事が理解できました。


【新湊カニ小屋】富山県射水市八幡町1-1100 TEL0766-84-8051
■香箱ガニ(石川県)
こうばこがには、漢字で「香箱蟹」あるいは「甲箱ガニ」と書く北陸の冬の味覚です。
ズワイガニのメスで、オスの半分ほどの大きさですが、甲羅の中にあるオレンジ色の未成熟卵「内子(うちこ)」やカニミソ、お腹には粒状の卵「外子(そとこ)」をたっぷり抱え、小さいながらもその味わいは天下一品。地元金沢では、オスよりも愛されてるようです。
食べ方は、湯がいてから、身を出してカニ甲羅の中に入れ、お酢または酢醤油で食べることが一番多いです。

しかし近年では、冬の金沢観光で必ず紹介されるのが、カニと金沢おでん。
金沢おでんは、「車麩、赤巻、ふかし、バイ貝、カニ面や源助大根に代表される加賀野菜など当地独特の具を使ったおでん」と定義され、最も有名な具材「カニ面」はズワイガニの雌の「香箱ガニ」を使った贅沢なおでんとなります。
「カニ面」は、甲羅に内子(未成熟卵)・外子(卵)・カニ足を詰めたもの。その外見が剣道のお面に似ていることからこの名が付いたと言われ、名付け親は昭和9年創業の香林坊「菊一」の二代目親父さん。
ぜひ食べて欲しい逸品です。



金沢でカニを食べられる期間は、オスのズワイガニが翌年3月20日まで、メスの香箱ガニは12月末頃までです。
カニの保護のため、漁ができる期間が毎年定められています。
【カニの種類と漁期】
オスのズワイガニ(加能ガニ):11月6日~3月20日頃まで
メスのズワイガニ(香箱ガニ):11月 6日~12月29日頃まで
■ずぼカニ(福井県敦賀市) 脱皮直後の越前ガニ
日本にはカニの種類は約1000種。
その中でも美味しく食べられブランド化しているカニは11種。
さらに人気なのが日本4大カニと言われるズワイガニ、タラバガニ、毛カニ、花咲カニ。
北陸は美味しいズワイガニがたくさん獲れます。
今回はズワイガニの中でも、福井が誇る「ずぼカニ」「水カニ」が有名な越前へ向かいます。
坂道を下り、きらきら光る日本海、いよいよ越前海岸が見えてきました。
カニ料理のお店や温泉宿がたくさん並ぶ街道を横目で見て進んでいくと目的地に到着。カニミュージアムとその向かいの「かに・さかな」と書かれた大きな看板の店です。
すぐ目に止まったのは山積みのカニをさばいている女性達で、あまりにも上手な手さばきなので、ただ見ているだけなのに何だか楽しくなっちゃいました。


そう、このカニが「ずぼカニ」です。
それは越前で水揚げされるズワイガニ(越前ガニ)の脱皮直後の若い蟹のことで、福井県では「ずぼカニ」または「水がに」と呼ばれてます。脱皮前より一回り大きくはなるが、蟹身はまだ未熟。脱皮直後なので、殻はとても柔らかく、脚身が「ずぼっ」と上手く抜けることから、「ずぼがに」と呼ばれているのだそう。
いよいよお目当ての「ずぼがに」とご対面です。いますいます、たくさんの「ずぼカニ」が。
試食用のバケツから年配のお姉さんが1本指でかに脚を「ズボッ」と抜いてくれました。
頂いてみると、口に喉に「ツルッ」と入ります。みずみずしさを感じながら、優しい甘みが広がってきます。なるほど「ズボッ」「ツルン」ですね。


次は、お向かいの観光協会がやってる食事処で「ずぼカニ定食」を頂くことに。
やはり新鮮さが伝わります。瑞々しく、つるんと舌触りが良く、これは何杯でも食べれそう。
お店の方いわく、「ずぼカニ」は11月から3月中頃までと漁期が短かく、その年によっても期間が異なるので、逃さないよう早めに来て欲しいと。本当に脱皮直後だけあって殻がとても柔らかく、子供でも簡単に手でさいて食べれますね。海沿いの福井っ子は、「ずぼカニ」をおやつ代わりにしてたという意味がよくわかりました。


【越前ガニミュージアム】福井県丹生郡越前町厨71-342-2626 TEL0778-37-2626
仕平幹子(しへいみきこ)
郷土料理研究家、フード&食空間コーディネーター、栄養士、だしソムリエ、米粉マイスター、飾り巻き寿司マスターインストラクター。
伝統料理を中心に、旬を大切にした家庭料理やお菓子などのアイデアレシピを発信。食べること、お酒を飲むことが大好き!